第10夜





隣に温かい気配がしてユウはそっと目を開けた。
魔力の使いすぎかあれからすぐに眠ってしまった。
下のほうでアシュタルとバノッサが話をしていたのは知っていたが、
自分が今冷静に話せるかわからない状態だったからアシュタルに任せていた。

そのアシュタルは今隣でユウを抱えながら寝ている。
一人が怖くていつもアシュタルを困らせていた。
その結果いつも一緒に寝ている状態であった。
まぁ、アシュタル自身・・・ユウが不安定であったときにいつでも支えられるようにこうしているのだ。

小さい頃からそうだった。
魔力がその辺の召喚士と桁違いだったユウは誰も近寄っては来なくて、いつも一人ぼっちだった。
特にユウが預かれていた派閥は身内で構成されていて、いくら強くても赤の他人。
ユウが入り込む場所はなかった。

派閥にいさせる条件として相手は無謀な要求をしてきた。
自分達が納得するような召喚獣を呼べという要求。

そのものたちは出て行かせる口実としてそういったのだ。
もちろん、どんな強くても理由をつけて出て行かせるつもりだった。
身寄りのない子供・・・。そんな子供にも容赦しなかった。

だがそんなことまで考えるには幼すぎた。
だが、ユウは召喚獣の勉強をしていたときある召喚獣を見つけた。
その召喚獣を思い浮かべながら召喚したのが霊属性最強の召喚獣【殲滅者アシュタル】であったのだ。

さすがに、それを召喚したユウにはびっくりした術士たちだが危険人物として排除しようとしたのだが、
アシュタルの力が強すぎる。
その時にやってきたのだ、その派閥を統括するもだった。



『面白い力を持っているな小娘・・・その力・・・我のために使わぬか?』



ユウは素直にその言葉を受け入れた。
このままでは誰も自分の存在を認めてくれない。その人だけが認めてくれたのだ。
その人の横にいたのが近い年齢で最初の友達になった男の子だった。









そんなことを思い出した。
夢で時々見る彼の存在。だが、小さすぎて覚えていないのだ。
それにユウが成長したとき彼はもうその派閥にはいなかったのだ。
見つけることができなかった。

もぞもぞと動くせいでアシュタルは閉じていた目をすっと開けた。
ユウは気付き”おはよ”と声をかけた。



「アシュタル・・・ありがと。昨日バノッサに言ってくれていたみたいだから」
「お前のためだ。それに疲れていて話ができる状態ではなかったからな」



やはりアシュタルには見破られていたらしい。
ユウはベットに腰掛けてそのまま停止。

アシュタルは部屋の窓を開けに行った。



ユウ、今日こそフラットとかいうやつらのところにいくぞ。・・・もちろんバノッサには内緒だがな」
「そうね・・・何かしら儀式の魔力とあの4人の子達の魔力が重なるし・・・見知った魔力が探れるの」



フラットの方面に儀式で発せられた魔力を持つものが4人。
その儀式の関係者かしらないが、昨日までなかった魔力が4つ確認できた。

おそらく召喚術を使える者が増えたと言うことだ。



「ふぁ・・・ねむぃ・・・」
「しっかりしろ。・・・また夢を見ていたのか・・・?同じような夢を」

「あ・・・ん・・・そうなの・・・。どうしても思い出せなくて・・・」
「・・・」



アシュタルは思い当たるがユウには見せず、着替えさせ下に下りていった。











***



リビングにはカノンが一人二人の朝ごはんを作り終えていたところだった。
カノンは二人が階段で降りてくるところをみて駆け寄ってくる。



ユウさん、アシュタルさんおはようございます。朝食食べてくださいね?」
「・・・ということは、いてもいいってことになってるんだね?アシュタル」
「あぁ、バノッサと話をしていたらな」



そのバノッサの姿が見当たらないが、ご飯の誘惑には勝てずそのまま席に座った。
アシュタルもその横に座る。



「バノッサさんはあまり一緒に食べることがないので、二人で食べちゃってください」
「そう・・・あ、カノン・・・今日私とアシュタルでかけるから」

「何処にお出かけですか?」
「あぅ・・・「フリーバトルにだ。こちらも泊めてもらう以上生活費なりを稼がなくては」アシュタル・・・」



”そんな気を使わなくてもいいのに・・・”とカノンは納得がいかなそうだったが、
アシュタルとユウの二人の説得により、折れた。

アシュタルのナイスフォローにより、ユウ達は北スラムを出て行った。








***




アルク川を通るとなにやらがやがやと大所帯が通っていく。
しかもそれは見知った人たちであった。

あちらもユウ達に気がついたのか茶色の髪の毛の男の子が声をかけてきた。



「あ、昨日助けてくれた人だ!・・・どうしたの?」
「あーあなた達に会いに来たのだけど・・・どこかに行くみたいね?・・・また今度にしようかな?」

「いや、こちらとしてもいろいろ聞きたいことがあるものでね。・・・リプレたちは先にいってくれていても構わないよ」



少年の言葉をきき都合が悪いと思い出直そうとしたところにそこを纏めていそうな騎士らしい人が止めた。

話を聞くと、レイドというらしくフラットの後見人らしい。



「いいのですか?折角皆さんと出かけるご様子でしたのに」
「いいんだよ。ちょっとした歓迎会をやるために花見をしに行く予定だったから」



”でしたら、余計にお邪魔では・・・”といったユウにリプレと呼ばれた人が近寄ってきた。



「あなた達がハヤト達を助けてくれた人かしら?だったら、一緒にお花見にいかない?お礼がしたいの!」
「はぁ?」



リプレはどうやら昨日のことを聞いていたらしくユウを誘おうとしたが、そこに不満そうな声があがる。
盗賊の格好をした紫色の髪の少年だった。



「何言ってやがんだ!こいつはバノッサと一緒にいた奴だぜ?信用できねぇよ!」
「でも、ガゼルはこの人に助けてもらったんでしょう!!だったらいいじゃない!」

「あ・・・あの・・・私たちは別に後日でもいいのですが・・・それに私は争いに来たわけでは・・・」
「うんなの、誰が信用できっかよ!!!」



ガゼルの剣幕にたじたじしていたが、ユウの後ろから手が伸びてきてガゼルにでこピンが飛んできた。
ばちっといい音がしたのを同時にユウが首を上に向けると、アシュタルが不機嫌そうな顔をして見ていた。



「うるさい。こちらとてお前達のことを思ってこうして話を付けにきてやっているのになんだこのざまは」
「テメェ・・・」

「あんまりこちらを怒らせると後悔するのはお前達だぞ・・・」
「まってください!!」



アシュタルの限界点が突破する寸前誰かの声により気がそれた。
見てみると大人しそうな雰囲気をまとう少女が声をかけてきた。



「クラレット・・・」
「その方は危険です。召喚術士でしかわかりませんが・・・ガゼルさん・・・あなたが太刀打ちできる相手ではありません」
「ほぉ・・・確かにな・・・お前はどうやら霊属性の術を知っているみたいだからな・・・わかるだろう?」



アシュタルの力は召喚術士では脅威の対象だ。
そんな召喚獣がうろうろしているわけではない。
つまり、その召喚獣を使役している彼女・・・ユウはもっと力がある術士とクラレットは捉えたのだ。

それに、クラレットと・・・近くにいたキールは、
ユウとアシュタルを何処かしらでみたようなことがある錯覚に捕らわれてた。



「えっと・・・君の名前は?」
「あ、ユウです・・・多分召喚師には知られている存在だと思いますが、彼がアシュタルです」
「あなたの召喚獣ですか?」
「・・・まぁ、一応は・・・」



クラレット達は一瞬考える顔をしてガゼルたちに向き合った。



「おそらく彼女達は私たちにようがあると思います。フラット自体ではないと思いますよ?」
「だから、僕達に任せてもらえないだろうか?」



二人の言葉にガゼルたちフラットは口を閉じた。
それを了承と捕らえたのか二人が代表してユウ達に挨拶をする。



「申し遅れました・・・私はクラレット」
「僕はキールで・・・あと後ろにソルとカシスという召喚師がいます」
「私たちは腹違いではありますが兄弟に当たるのです」



兄弟といわれて目が見開く。
確かにところどころ似ているところがあったからだ。



「・・・おそらくあなたは儀式場でのことを私たちに問いただしたいということではないのですか?」















#後書き#

ここで切らないとそろそろ長い(笑)
さて、これもようやく二桁!大変だった(汗)
でも皆のおかげで頑張れそう!!(ぉ)
さってvv楽しみだーv